【ごあいさつ】

こんにちは、主宰の瀬口昌生です。
僕は以前、兵庫県立ピッコロ劇団という、大きな組織に所属していました。
大学を卒業してから都合12年間お世話になりましたが、自分で演劇活動をやってみたくなって退団することにしました。
それからというもの、俳優を育成することを生業としながら現在に至りますが、こうして自分の集団を持つにあたって、現在進行形でいろいろなことを考えます。

先ず、「自分は何を面白がっているのか」ということです。
世の中にある様々なドラマや事件に対して、自分が何に興味を持ち、どんな劇空間を創作するのか。演劇は観客がいて成り立つものですし、少なくともちゃんと主張を持っていなければ伝わりません。それに、どこかで共有できなければ観ていても面白くないと考えます。「俺が今面白いと考えているのはコレだ!」というモノを提示しながら、独りよがりにならないようにするには、どんな形でアピールするのが良いのか? お客様を飽きさせないようにするにはどんな見せ方をしたらよいのか? こう突きつめていくと、演劇という創造活動は無限に広がるものであり、最もエキサイティングな活動でもあります。

次に、僕の創作方法です。
当初この集団を立ち上げたときは、インプロヴィゼーション(即興演劇)をやるつもりでした。しかし、思ったようにいかずどうしたものかと思案していたところ、メンバーの中から「台本のあるものをやりたい」という意見がでてきました。それまで俳優訓練のための小品(短編)は何度か書いていましたが、ひとつの作品を書き上げるとなると、都合60分くらいはやらなければいけないなぁ、とか、既成の作品をやるという手もあるけれど、どうせやるなら自分で書いたほうがいいのかもしれないなぁ、とか、これも修業か、とか考えさせられたわけです。
どうやら目下のところ、僕の作風は「俳優にあて書きする」作風のようです。集まった面子とワークショップのような作業を繰り返しながら、その俳優たちをどのように活かせばよいのか、彼ら彼女らが面白がれる表現は何なのか……これは僕が俳優でもあり、演じることの面白さを知っているからそのような考えになるのでしょう。

そして、「これから自分はどうしていきたいのか」も考えさせられます。
自分の足でしっかりと立てるようになること。前を見て進んでいく力を養うこと。ピンチをチャンスと本当に思えること。目の前に起こった出来事に対してそれを真摯に受け止め次の一手を打てるようになれること。自分自身というドラマを楽しめること。今書いたことは総べて理想です。僕は今38歳ですが、もし人生80年生きるとしたら、まだ半分です。男性は50代になって脂がのってくる(お腹にではないですよ)といいますから、よき40歳を迎えるには何が必要なのかを今こうして考えています。

どうであれ、僕は演劇に出会ってしまいましたし、今更辞めるわけにはいきません。
どうぞ応援よろしくお願い致します。

2010年 早春